リニューアルした新潟市美術館を巡る~にいがた観光親善大使と学芸員が案内する新たな魅力~

1985年に開館して以来、多くの市民に愛され続けてきた「新潟市美術館」。2025年で開館40周年を迎える同館は、約11ヶ月間の改修工事を経て、2025年8月にリニューアルオープンしました。
今回は第15代にいがた観光親善大使の田中さんと、外壁のタイル交換や、照明のLED化、空調の改修などをおこなったことで、作品をより快適に楽しめる環境へと生まれ変わった新潟市美術館を巡ります。

打ち込みタイルが印象的な建物は、新潟市出身の建築家、前川國男が設計。館内では所蔵作品の展示や多彩なテーマによる企画展などが開催されています。

案内してくれるのは、展示や美術館の運営に携わる学芸員の荒井さんです。今回は館内の魅力を知り尽くす荒井さんに、建物のみどころや注目ポイントを教えてもらいます。

案内されたのはエントランス。開館当時から変わらない空間です。

荒井さん

当美術館では前川國男のこだわりを見ることができます。まずは天井をご覧ください。

天井を見上げると青く染められています。新潟は冬になるとなかなか青空が見えないため、美術館ではいつも青空を見てほしいとスカイブルーを採用したそう。

壁や床など天井の他にも館内にはカラフルな色合いが使われています。田中さんが座るスツールもその一つ。

荒井さん

床のタイルは中央から円を描くように配置されているんですよ。

よく見ると床にも前川のこだわりが隠されています。

田中大使
荒井さん

私のお気に入りは照明です。白い壁でもいいところに作られているのは、前川さんからの贈りもののように感じます。デザイナーの亀倉雄策さんがデザインしたリボンのようなモチーフが添えられているところも気に入っています。

荒井さん

廊下のスロープにも注目してみてください。展示室までの廊下を歩くとわくわくしてきませんか?

スロープや天井、壁などに曲線を取り入れたデザインが施されているのも特徴の一つ。外壁のタイルと対照的に優しく、柔らかい造りは、来館者を気づかない間に包み込み、いつの間にか、自分もアートの一部になっているような感覚を味わえます。

次に向かったのは展示室。新潟市美術館では年間約4回の企画展を開催。テーマに沿って国内外の作品を鑑賞することができます。

天井の高さが異なる3つの展示室は、企画展に併せてパーテーションを動かすため毎回違う雰囲気に。この日は美術館のリニューアルに沿った企画で、代表するコレクションだけでなく歴史を伝える資料、改修工事で交換した照明器具や開館当時の内壁に使われたカーテンや椅子まで展示されていました。

荒井さん

展示室には隠れた休憩スペースがあって、座って作品を観ることもできます。

休憩スペースの窓からは桜や新緑など季節ごとの景色を見ることができるんだそう。

常設展示室は、開館10周年の際に増築された部屋です。カーブした壁面が印象的な造りで、作品を表現力豊かに展示することができます。世界的な有名作家の作品から現代美術まで、約5000点の所蔵品の中から展示されています。
作品に描かれている水平線に合わせて展示するなど、アートに馴染みがなくても楽しめるような遊び心を感じる工夫がされているのも魅力の一つです。

荒井さん

ライトも新しくなって作品の色をより見やすくしました。

田中大使

洋画、日本画の絵画だけでなく、立体作品などをゆっくり眺めることができるコレクション展は、年に約3回作品を変えているそう。訪れる度に異なる作品を楽しめます。

続いて訪れたのは屋外。実は展示を見なくても入れる場所で、荒井さんお気に入りの場所でもあります。タイル貼りの外壁と自然が調和する空間で散歩にもぴったり。夜になると、きのこ型のライトに明かりが灯り優しく足元を照らしてくれるそう。

荒井さん

仮止めしたタイルの内側にコンクリートを流し込む「打ち込みタイル」を使った外壁は、前川建築を代表する技法の一つです。オリーブグリーンのタイルは約12万7千個も使われていて、改修工事では職人さんが一つずつ叩いて交換するものを確認しました。

改修には職人の見えない努力が隠されています。

奥へ進むと「山の庭」が見えてきます。
ぶなの木が植えられた庭に陶製のベンチが配置され自然の中にいる気分に。隠れた人気スポットです。

荒井さん

壁をご覧ください。コンクリートに木目を写して、自然を感じられるようになっているんですよ。板を交互に貼り付けているようについた模様にも注目です。

田中大使

館内の柱などにも施されている加工で、石なのにまるで木のような柔らかな印象を感じるはずです。

実はまだみどころが隠されている館内。エントランスから2階に上がると本のラウンジがあります。世界中から集められた美術書や図録などエントランスを眺められる空間で読書を楽しめます。アートな空間で休憩したい時や展示の余韻に浸りたい時などに訪れてもよさそうです。

荒井さん

エレベーターの交換をしたり、入り口の切り子の照明フードをガラスからアクリルにしたり、なるべくデザインを変えずに改修をしたので、来館者が変わったところに気づかないことが正解だと思っています。さらに快適になった新潟市美術館に遊びにきてください。

作品の鑑賞だけでなく、洗練された空間でアートな気分を楽しめる新潟市美術館。館内には季節のスープと食事、ティータイムを楽しめるカフェも併設。ワークショップや学芸員によるツアーなども開催されているので是非参加してみてください。新しくなった新潟市美術館でアートを感じる時間を過ごしてみませんか?

※営業時間や定休日、価格等は令和7年10月現在のものです。変更となる場合がありますので、詳細は店舗へ直接ご確認ください。

INFORMATION

新潟市美術館

所在地 : 〒951-8556 新潟市中央区西大畑町5191-9
アクセス : 【バス】C21浜浦町線信濃町行乗車、「西堀通八番町」下車徒歩約5分
電話 : 025-223-1622
営業時間 : 9時30分~18時
定休日 : 月曜日
HP :https://www.ncam.jp

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